Club Noohl
プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
DATE: 2013/02/18(月)   CATEGORY: SCRIPTORIUM
菫色の写字室、閉幕。
 HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム》は、お陰様で盛況のうちに無事閉幕いたしました。


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 ご来廊下さいました皆々様に心より御礼申し上げます。森岡書店さんの美しき空間にて菫色のひとときを皆様と共有できましたこと、本当に嬉しゅう存じました。

 タイポグラフィと聖書という、私どもにとっては生活の中心とも言える題材の展覧会でしたが、一般的には少しマニアックな分野であるかもしれず、いつも以上に緊張の心地でお客様をお迎え致しました。


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菫色の沈黙に棲まう紙と文字たち……


 開幕してみると、皆様思い思いにスウリプトリウムの文字たちを楽しんで下さり、じっくりと時間をかけてご高覧下さるお客様が大変多かったこと、また、一度ならず二度ご来廊下さったお客様もいらっしゃり、過去の不遇の時代を思い返しながら、ただただ感謝するばかりでございました。

 初日と最終日は殊に多くのお客様がかけつけて下さり、ご挨拶やおもてなしが行き届かず反省しきりでしたが、沈黙に棲まう文字たちが、私ども以上に多くを語ってくれていたかもしれません。


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「スカーレット・マルタゴン(百合)」の書体で欽定訳聖書の「雅歌」を写す……
パラグラフ(段落)記号はオリーブの木♪



 悠久の時を経て脈々と受け継がれ、いま此処、私どもの掌にこうして届けられた聖書の奇跡を、頁をめくるたびに想いめぐらし、厳粛な気持ちになります。膨大なる言葉の森にそっと分け入り、少しのささやきも逃さぬよう心を澄まし、清らかな気持ちで小さな文字を辿る日々…… 
 「菫色は特別な色なのですね」と何人ものお客様からお声をかけて頂きました。私どもにとって菫色とは、物事のあわやかな隙間にそっと存在する時空間、どこまでも澄み渡った沈黙の場所をもっとも正確に言い表す言葉です。スクリプトリウムもその場所に存在させたい……制作とは常に、菫色を探す旅程でもあります。


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シルクスクリーン作品《ゲツセマネの祈り》


 その道行きで様々な奇跡や出会いがあり、この度のスクリプトリム、菫色の写字室が生まれました。


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《孤独の痕跡(あと)、地上の時間の残り、乾いた疵》デジタル写真、銀塩プリント


 制作の過程で、敬愛するピアニストである久保田恵子さまからR.M.リルケ詩集『マリアの生涯』(塚越敏訳・国土社・1986年刊)を教えて頂いたことは本当に大きな出会いでした。エレミヤの哀歌の世界にリルケの世界を重ね、写真作品《孤独の痕跡(あと)、地上の時間の残り、乾いた疵》と《やさしい肩》は生まれました。タイトルもリルケの詩からの引用です(一部、漢字を仮名に変更しています)。


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スクリプトリウム、書体の廻廊に佇む久保田恵子さまの美しき後姿♪


   イエスは ほんの一瞬 女性(マリア)の優しい肩に
   やがて永遠のものとなるその手を
   わずかに載せただけであった。
   ふたりは 春の季節の
   樹木のように、静かに
   しかも永遠に、
   ふたりの極度の交わりの
   この季節を始めたのだった。

        ……R.M.リルケ詩集『マリアの生涯』(塚越敏訳)より



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《やさしい肩》デジタル写真、銀塩プリント


 「森林の文化である独逸語圏では、定期的に森林を間引き(伐採)しないと地上に光が届かなくなるため、木こりたちがその役割を担ってきた。と同時に、雷などの自然現象による間引きも行われ、そのような場所は聖なる場所=リヒト(光)として大切にされてきた。そのリヒトを思わせる作品です」と、科学基礎論がご専門で、世界中の言語を習熟している方からご感想を頂戴しました。リルケの世界観を重ねたことを申し上げるとその符合に大変驚いていらっしゃいました。リルケの言う「痕跡(あと)」「空席」「間隙(かんげき)」の底流にある感覚を深い部分で理解したひとときでした。


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限定版書物《QUIRE〜エレミヤの哀歌》に納めた欽定訳聖書(KJV・1611年)の原文
嘆きの物語にふさわしき藍色の雁皮紙に……



 聖書やキリスト教への理解を深めるため、これまで神学者・加藤隆先生のご著作を拝読し、少しずつ学びを重ねてきました。そして、本当に光栄なことに、会期最終日、尊敬申し上げる加藤先生がご多忙にもかかわらずご来廊下さったのです! ……まるでオスカー・ワイルドのようなエレガンスを纏った先生を前に終始緊張しきりでしたが、さらなる感激の出来事などもあり、ただただ神様に感謝するばかりでございました。
 「旧約聖書はヘブライ語、新約聖書はギリシア語で書かれているので、それらの言語にも挑戦してみてはいかがですか」との大いなるご助言も頂戴し、スクリプトリウムの新たな目標も生まれました!


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マタイ受難曲に捧ぐ作品《St Matthew Passion》(左)
雅歌が題材の《園の中に住む者》(右)/リトグラフ作品



 また、初めて訪れて下さった青年(二度もご来廊下さいました♪)から、セルジュ・ルタンスの世界を思わせます…との嬉しいお言葉も! 敬愛する芸術家であるルタンスの香水「ローフォアッド」をひそかに身につけておりましたので、感激もひとしお……





 今回の展示はデザイン工房HOLON設立16周年を記念した展覧会でもありました。これまで手がけた約1,000冊の装丁の中から、代表作を時系列に並べ、各分野の方々から頂戴したコメントも併せて半立体のダイアグラム・オブジェに仕立てました。


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装丁年表、ダイアグラム・オブジェ
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装丁してきた書物群





 また、嬉しいことのひとつに、ノール作のブローチを身につけてご来廊下さる乙女の方々がたくさんいらっしゃり、心の中で号泣しておりました……皆様を激写することを失念してしまいましたが、幸運にも敬愛する画家・黒木こずゑ様を激写!


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いつもかわゆらしきこずゑ様♪ 作品《沈黙の聖女》と共に… 
ノール作のリボンとタッセルのブローチ(ブリティッシュグリーン)をお帽子に付けて……







 菫色の写字室にて聖書を写字すること、オリジナル書体を制作することはライフワーク。またいつか、沈黙に棲まう文字たちと共に皆様とお会いできますことを楽しみにしております♪


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 最後になりましたが、清廉なる空間を私どもに貸して下さり、会期中、様々にお心尽くしを下さいました森岡書店ご当主の森岡さまに心より御礼を申し上げます。






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会期終了の翌日、敬愛する静岡の医学司書・T女史より美しい薔薇の苑が届きました♪
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DATE: 2013/02/16(土)   CATEGORY: SCRIPTORIUM
《スクリプトリウム》
 HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム》も早いもので最終日を残すのみとなりました。

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HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム》
〜聖書の言葉を写し、纏う試み〜


2013.2.11[月・祝]〜16 [土]
13:00〜20:00
森岡書店(日本橋茅場町)



 約二十年前からこつこつと制作してきたオリジナルのアルファベット書体を初めてお披露目する展示です。

Typefaces.jpg《書体の廻廊》修道院の廻廊に見立てたデザイン枠に書体が並んでいます


 約二十年前に初めて制作した書体《パピルス》と、今年に入って制作した書体《薔薇窓》が仲良く並んでいる風景は感慨深いものがあります…

 制作し始めた当時、「可読性の低い(=読めない/読みにくい)書体は文字とは言えない」とまったく共感を得られず、それでも「言葉の意味を伝達することだけが書体(文字)の役割ではないはず。言葉には、ニュアンスや色彩、語られる人の声色による印象、歌われる言葉の艶やかさ……等々、曰く言いがたい多彩な情景があり、それらを記述するための書体があってもいいはず……」と、可読性よりも装飾を重視した書体を制作し続けてきました。

 そんな不遇の時代、この書体に強く共感し応援し続けてくれた方が二人居ました。

 ひとりは当時通っていた美術大学に「映像工学」を教えに来て下さっていた慶應義塾大学の福田忠彦先生。そのご縁で、人間工学がご専門の先生の元、オリジナル書体の研究を論文にまとめ、二つの国際会議で発表することができました。また、慶應義塾大学(藤沢キャンパス)での先生の授業の枠に私の発表を組み込んで下さり、年に一度、学生さん達にむけて発表する機会を設けて下さったりと、言葉では尽くせぬ程のご恩があります。先日、福田先生がご多忙の中ご来廊下さり、長年の成果をご高覧頂けたことは本当に嬉しく、感慨深く、神様にただただ感謝するばかりでした。

 もうひとりは、共にHOLONとしてブックデザイン業を営んできた腹心の友・ルカさん。1997年のHOLON設立以来、オリジナル書体制作は二人のライフワークとなり、この度の展覧会を迎えることができました。


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左:リトグラフ作品《Ash Wednesday》
「創世記(文語訳)」の一節が書体[セメタリー・ゲイツ]で組まれています
右:リトグラフ作品《喪の都邑(みやこ)》
「エレミヤの哀歌(欽定訳聖書)」の一節が書体[短夜][サフラン・クロッカス]で組まれています



 取り上げた聖書の一節に最もふさわしい書体はどれか……という試行錯誤から制作は始まります。これまで制作した書体の中に最適な書体がない場合は新しい書体を制作しました。


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 《Ash Wednesday》は聖灰水曜日に捧げた作品。創世記の一節「汝は塵なれば塵に皈るべきなり」が綴られています(日本語を綴る場合はローマ字組みしています)。灰の水曜日は大斎節の始まりの日、生と死に想いを寄せる日です。灰の水曜日の礼拝では、一年間大切にしてきた棕櫚の十字架を燃やし、その灰で額に十字架の印を受けます。その際、司祭が唱えるのが先の一節にちなんだ文言「あなたは塵から生まれたのだから、塵に帰らねばならぬことを覚えなさい」。
 書体「セメタリー・ゲイツ(制作年:2012年)」は欧羅巴の墓地の鉄細工の門をイメージして制作、墓地の門はまさに生と死の狭間に位置する存在、創世記の一節を綴るにふさわしい書体として選びました。


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 《喪の都邑(みやこ)》は、欽定訳聖書(KJV・1611)の「エレミヤの哀歌」の一節「For these things I weepe, mine eye, mine eye runneth downe with water,」(文語訳:これがために我なげく わが目やわが目には水ながる)が綴られています。聖都エルサレムを喪ってしまった悔悛と深い悲しみで頬を涙がつたう嘆きの場面。

 書体「短夜(制作年:2004年)」は、夜が早く明け、物の隙間から朝の光が差し込む様子を象った書体。短夜のように、喪の夜が早く明けますようにとの願いを込めて。胸元にブローチのように冒頭の単語「For」が綴られています。
 書体「サフラン・クロッカス(制作年:1993年)」はサフランの花びらと長い雌しべを象った書体。旧約聖書「イザヤ書」の、聖都エルサレムの栄光の回復が約束されている箇所「荒野とうるほひなき地とはたのしみ 砂漠はよろこびて番紅(さふらん)の花のごとくに咲き輝やかん」にちなみ、サフランに喪が明ける願いを託して。


 ……と、全作品、このような過程を経て制作されています。


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シルクスクリーン作品《沈黙の聖女》
「詩編」の一節「わがたましひは默してたゞ神をまつ」が書体[短夜][向日葵]で綴られています



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《小袖雛形聖書》シリーズ4点のうちの1点
「伝道の書(コヘレトの言葉)」の一節「裂くに時あり」が書体[天球儀]で組まれています



 以上は聖書の言葉を写し、衣服として纏うことを試みた平面作品の一部。

 ・

 コラージュの手法を応用した写真作品も展示中です。

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上:《すみれとすみれのあいだ》デジタル写真/銀塩プリント
下:《夢のゆきかう薄明》デジタル写真/銀塩プリント


 リトグラフ作品《Ash Wednesday》の手袋の切り抜きを立体コラージュの感覚で配置、写真で一発取りをしています(パソコン合成はしていません)。エリオットの詩《Ash Wednesday》のイメージを重ね、そのポエジーを表現すべく制作しました。タイトルはエリオットの詩からの引用です。



 平面作品は一節を綴っていますが、限定版書物では、欽定訳聖書の「The Song of Solomon(雅歌)」と「The Lamentations of Ieremiah(エレミヤの哀歌)」それぞれの全文をオリジナル書体で綴りました。中世の修道士たちが一文字一文字手書きで聖書の言葉を写したように、現代に生きる私どもは現代的な手法たるデジタルフォントで聖書を写しました。


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タッセルの栞付き書見台の上の限定版書物《QUIRE》シリーズ


 「QUIRE」とは折帖のこと。折帖がいくつか製本されてコデックス(冊子・書物)となります。その昔、修道士たちはQUIREごとに写字に勤しんだそう。今回展示するのは二つの「QUIRE」。一生かけて聖書の「QUIRE」を制作し続け、いつかコデックスとして完成させたいです♪


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《QUIRE〜The Song of Solomon》限定20部
クワィア1帖(糸縢り手製本)、リトグラフ1点、原文、書体見本
シルクリボン綴じ・特装函入り
ファブリアーノ・ロサスピーナ紙、ハーネミューレ紙、雁皮紙使用



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《QUIRE〜The Lamentations of Ieremiah》限定20部
クワィア1帖(糸縢り手製本)、リトグラフ1点、原文、書体見本
シルクリボン綴じ・特装函入り
ファブリアーノ・ロサスピーナ紙、ハーネミューレ紙、雁皮紙使用



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版画作品の刻印とサイン



 版画、写真、書物作品(全て新作20点)の他、プライベート出版物や長く装丁を担当してきた『現代思想』(青土社刊)なども展示中です。


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邦楽家・西松布咏氏のための舞台衣装(2004年)
書体[短夜]にて江戸時代の小唄「一声は」の詞章が組まれています
コンサート当日、「一声は」の詞章を纏いつつ「一声は」をご演奏されました




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 本日16日最終日、菫色に色づく写字室にて、皆様のご来廊を厳かにお待ちしております!


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DATE: 2013/02/12(火)   CATEGORY: SCRIPTORIUM
HOLON タイポグラフィ作品展
ミストレス・ノールの本業(グラフィックデザイナー)の展覧会のご案内です

★★★終了しました★★★

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HOLON タイポグラフィ作品展
スクリプトリウム
〜聖書の言葉を写し、纏う試み〜

2013.2.11[月・祝]〜16 [土]
13:00〜20:00
森岡書店
(日本橋茅場町)



「SCRIPTORIUM」とは修道院の写字室のこと
長きに渡り、修道士たちの手により
聖書の言葉は壮麗に写され、遺されてきました
私達は、アルファベット書体デザインを現代の写字法ととらえ、
文字によって多彩な情景を表現できるよう、
装飾を重視した書体制作を行ってきました
本展示では、文語訳聖書と欽定訳聖書(KJV・1611年)を題材に、
聖書の言葉を写し、衣服として纏う試みを定着させた
タイポグラフィ作品(平面・書物)を発表します

HOLON設立16周年を記念し、設立当初より
表紙デザインを担当してきた『現代思想 臨時増刊号』(青土社)、
プライベート出版物なども展示販売します




デザイン工房[HOLON]
1997年設立。ブックデザインを中心に、グラフィックデザイン全般に従事
1999年よりプライベート・プレス[Club Noohl]を運営、
限定版アートブックの刊行やオリジナル紙製品等も制作している




DMは修道院の廻廊をイメージして制作しました

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並べるとタイポグラフィの廻廊になります♪

アーチの内部に配置した模様のような図案が
オリジナルデザインのアルファベット書体です
左上から順に「ABC…」と並んでいます

これらの書体で聖書の言葉を綴った平面作品と書物の展示になります

皆様のお越しをお待ちしております




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DATE: 2013/02/02(土)   CATEGORY: SCRIPTORIUM
写字室より
 HOLON タイポグラフィ作品展《SCRIPTORIUM〜聖書の言葉を写し、纏う試み〜》会期も近づき、もっか鋭意写字中です。

 ★森岡書店さんのHPに掲載中の展覧会情報
 →SCRIPTORIUM

 シルクスクリーン、リトグラフ、写真作品、限定版書物、書体見本、約20点(全て新作)の展示になります。作品以外に、HOLON設立当初から表紙・目次・扉デザインを手がけてきた『現代思想 臨時増刊号』(青土社)やプライベート出版物、邦楽家・西松布咏氏のために制作した舞台衣装(着物と帯/オリジナルアルファベット書体で綴った詞章を染めたもの)なども展示予定です。

 ・

 作品画像(部分)を少し…

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リトグラフ作品《Ash Wednesday》(部分)
薄墨色のキャンソン・エディション紙に菫色と濃灰色の二色刷り


 作品《Ash Wednesday》は書体「Cemetery Gates」で「創世記」(文語訳)の言葉を写しました。(会期中の2月13日が今年のAsh Wednesday/灰の水曜日です)
 制作している書体は全てアルファベット書体、日本語の文はローマ字組みをしています。書体「Cemetery Gates」はその名の通り、欧羅巴の墓地のアイアン細工の門をイメージして制作しました。墓地の門はまさに生と死の狭間に位置する存在……Ash Wednesday(灰の水曜日)も生と死に思いをはせる季節の始まり…「あなたは塵から生まれたのだから、塵に返ることを覚えなさい」に想いを馳せつつ・・・


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リトグラフ作品《St Matthew Passion》(部分)
薄墨色のキャンソン・エディション紙に濃灰色の一色刷り


 作品《St Matthew Passion》は、この世で最も好きな楽曲《マタイ受難曲》へのオマージュ。書体《薔薇窓》で「マタイ傳福音書」(文語訳)の一節を写しました。ゴシック建築の教会を彩る薔薇窓、そこから差し込む美しい光にイエス様の嘆きを重ねて……


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リトグラフ作品《園の中に住む者》(部分)
薄い琥珀色のファブリアーノ・ロサスピーナ紙に濃灰色と紫紅色の二色刷り


 作品《園の中に住む者》は、書体「Scarlet Martagon」にて「雅歌(The Song of Solomon)」の一節を写しました。欽定訳聖書(KJV・1611年)からの引用です。雅歌に登場する百合はパレスチナに多く咲くスカーレット・マルタゴンという説が最も有力とのこと(『聖書の花』阿部薫著・八坂書房より)。書体「Scarlet Martagon」はくだんの百合をモチーフに制作しました。


 版画作品は版画工房との共同作業です。プロフェッショナルなお仕事ぶり、殊に色彩に対する精緻な感性が素晴らしく、こちらが指定した微妙な色味を完璧に表現して下さいました。


 シルクスクリーンでは和風モダンな作品も制作しました。

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シルクスクリーン作品(部分)
《傳道之書(コヘレトの言葉)》の一節を書体「Cemetery Gates」で♪




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写真作品《Footfalls Echo in the Memory》(部分)

 コラージュの手法を応用した写真作品シリーズ(パソコン合成は行っておりません)。今回題材に選んだ聖書の言葉にT.S.エリオットの詩「四つの四重奏曲」「聖灰水曜日」、R.M.リルケ「マリアの生涯」のイメージを重ね、作品化しました。

 足音は記憶の中に反響する
 開けたことのない薔薇園への出口のある
 通ったことのない廊下に
 反響する。私の言葉は反響する
 そんな風に、あなたの心にも。

        .....「四つの四重奏曲〜バーント・ノートン」(西脇順三郎訳)より



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 限定20部の書物作品は、オリジナル書体で装飾された「The Song of Solomon(雅歌)」と「The Lamentations of Jeremiah(エレミヤの哀歌)」の2種(欽定訳聖書(KJV・1611年)より引用)。欽定訳聖書のサイズを反映した大判の書物になります。特装函入り、リトグラフ作品1点付き。


 
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 ……と、日々鋭意制作中の此処写字室に、セラフィムの中元さまよりなんとも粋な贈り物が届きました!

 フランチェスコ修道会伝統のレシピによるハーブティ(清廉なるお味!)、聖シルヴェストロ修道院の蜂蜜(やさしいお味をそのまま頂きました)、そして、ソーテルヌの貴腐ワインにつけ込んだレーズンをショコラで包んだ小さな宝石のようなデザート……まさにスクリプトリウム・セット!

 武蔵野修道院・写字室の士気がいっきに上がりました♪


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夜半、制作の喧噪を忘れ、束の間優雅なひとときを堪能♪

 聖トーマス教会の《マタイ受難曲》を聴きながら、静寂のひとしずくをゆっくりと味わいました。

  悔い改めの念が
  罪の心を千々にさいなむ、
   この涙の滴が
   好ましい香水となって
   イエスよ、あなたに注がれますように

         .....《マタイ受難曲》ピカンダー詩、アルトのアリアより




聖トーマス教会《マタイ受難曲》/アルト:シュテファン・カーレ



 中元さま、素晴らしきお心遣いを本当にありがとうございました!


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 HOLON タイポグラフィ作品展《SCRIPTORIUM》、まもなく扉が開きます。

 皆様のお越しを心よりお待ちしております♪
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