Club Noohl
プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
DATE: 2006/03/01(水)   CATEGORY: 物語のひとひら
物語のひとひら ……序章……
20060513215454.jpg

 メール・ブック《刺繍刑》の姉妹版として2004年3月に創刊しましたリーフ・ブック《刺繍刑》も、第5号まで刊行し、第I期刊行分を終了いたしました。〈フェティシズム〉と〈同性愛〉の繊細な世界を、短歌や童話、写真などで綴ることをテーマに、小さなカード類や小冊子などを、リーフ状の書物として、小さな箱にパッケージしています。

 祖母が丁寧に取っておいた包装紙で作った小さな封筒、リリアンで編んだ紐、紙せっけん、おもちゃの指輪、いい匂のする消しゴム……。幼き頃、それらは小さな物語を約束する、大切な宝物でした。宝物と自分との間にだけ結ばれる絆は、とても微細な件によって構成されています。ちょっとした紙の張りや薄さ加減、紙せっけんの角の丸みの具合、新しい消しゴムの縁の感触など、何故かはわからないけれども、どうしようもなく引きつけられる何かに、とても従順だったと思います。

 歳をかさねた今、成長や成熟の蔭で、かえってそのころの記憶はすくすくと、こころの奥底で芽吹いているように感じます。どうしようもなく引きつけられる〈フェティシズム〉と〈同性愛〉の世界……、誇り高き召使の様に、そのことに従順でありたいと願っています。リーフ・ブックの紙葉の端々が、読む方の指先を通して記憶の糸を細やかに織り上げられるよう……
 
 当コーナー《物語のひとひら》では、これまでのリーフ・ブック制作にまつわるエトセトラにふれながら、〈フェティシズム〉や〈同性愛〉についてのあれこれを綴っていけましたらと思います。
page top
DATE: 2006/02/13(月)   CATEGORY: 物語のひとひら
〈ビーダーマイヤーの棚〉
20060601131313.jpg


 リーフ・ブック《刺繍刑》収録の童話集『ビーダーマイヤーの棚』シリーズは、内容に応じてイラストや写真、ニードルワーク(ビーズ刺繍)作品などを添えた小冊子です。第3号からは刺繍糸や蔵書票など、童話にちなんだおまけも同封しました。

 童話はすべて、思春期のころの記憶を題材にしています。純真なたましいと成熟しつつある知性とが折り合いをつけることを知らず、その迷いのままに日々ひたむきに過ごしていたころを懐かしく思い出しながら、綴りました。折り合いをつけることを身につけてしまった今となっては、もうあの頃のような繊細は望むべくもありませんが、せめて、あのころの印象のままに、書き留めておくことができたなら……と。

 第1号収録の『六つの異國風舞曲』は、双子のように過ごした、実在の友人とのお話です。同性に対する未知なる感情を言い表すことすら知らず、様々なモノやコトを無意味に媒介させつつ、その実、愛情を告白し合っている様は、今思い返すとなんと微笑しい様子でしょう……皆様もご経験ございませんか・・・

 永遠に、今のままがずっと続くと信じていたころの、少女の無謀をお楽しみいただけましたら幸いです。
page top
DATE: 2006/02/10(金)   CATEGORY: 物語のひとひら
〈a story of the shoe〉
20060518231151.jpg


 リーフ・ブック《刺繍刑》のそれぞれは、全てが続きものの一片になっています。

 小さなカードの表面には片靴の写真、もう一方の面には短歌を綴った〈a story of the shoe〉。この連載では、わたくしが蒐集している靴を主人公に、その靴に馳せた想いを綴りました。

 靴に対する偏愛は、少女時代に遡ります。黒エナメルのロングブーツを履くことのできる嬉しさは、冬の日の、のどかな雪景色とはどこかしら不釣合だわ・・・と幼心にも感じ、そのせいでかえって特別なことのように、ファスナーをジジジと上げる行為に感じ入っていました。

 それぞれの靴には、その靴が一番美しく見える角度、つまり、ひとつの彫刻として物語を喚起する角度、というものがあります。自室のアンティーク・キャビネットには、まだ一度も下ろしていない靴の数々が、各々の特定の角度で陳列されています。アクリルの美しいソールを持つ黒革のサンダルは、黒革とアクリルの接点のラインが美しく映えるようにやや横向きに、花刺繍で彩られたウェッジソールは背面からの急勾配を、15cmピンヒールの黒革のブーツは、踵部分に垂れるリボンが正面になるように、と。

 〈a story of the shoe〉では、可愛らしいUSAコットンやマルベリーのシルクカーテン地などを敷いた上に、リボンやタッセルを絡ませた片靴を置き、撮影したものをお届けしています。21cmという足のサイズを呪った時期もありましたが、ひとつの彫刻としては実にそそられる寸法だわ・・・と、今は意味もなく納得しています。
page top
Copyright © Club Noohl. all rights reserved. ページの先頭へ