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DATE: 2012/06/21(木)   CATEGORY: 随想録
嵐の夜の静寂
 台風の夜、セラフィムの中元さま、腹心の友ルカさんと共に、銀座・王子ホールにて開催されたリサイタル《アレクサンドル・タロー&バティスト・トロティニョン》に行って参りました。クラシックとジャスのピアニストによる二台のピアノの演奏会。



★プログラム★

2012.6.19

バルトーク
「ミクロコスモス」

演奏:タロー&トロティニョン

トロティニョン
「2台のピアノのための4つの小品」より
「HOME」

演奏:タロー&トロティニョン

ラモー
「新クラヴサン組曲」より
「ガヴォットと6つのドゥーブル」

演奏:タロー&トロティニョン

ミッシェル・ルグラン
「愛のイエントル」

演奏:タロー

トロティニョン
「即興曲」

演奏:トロティニョン

ピアソラ
「リベル・タンゴ」

演奏:タロー&トロティニョン

トロティニョン
「2台のピアノのための4つの小品」より
「賛歌」「ラングサム」
「ミュージック・フォー・ア・ホワイル」

演奏:タロー&トロティニョン





 黒衣のピアノをはさんで交わされる音楽の対話は、絵画的にとてつもない美をふくんでいました。空間にくっきりと浮き出されたピアニストの二つの横顔……(下の記事に書いたばかりの)スキャパレリとプラダの架空の対話をバズ・ラーマンが映像化した場面を想起しました。

S-P-I-C.jpg
スキャパレリ(ジュディ・ デイヴィス)とプラダの横顔


 どちらにも、二人の間には、漆黒の闇たる領域が存在している……それは、決して縮めることのできない、絶対的に確保されている距離なのだとつくづく思いました。

 距離を保ったまま、二人の関係は深まってゆく……奏でられる音色は、ピアニスト自身でも、ホールという空間でも、私たち観客でもなく、二人の間に茫々と横たわる漆黒の闇へと消えてゆくようです。

 モノローグでもなく、ダイアローグでもない、第三の発話たるその悲哀にまず心を打たれました。距離への諦念は、世界の闇に触れてしまった者(芸術という深淵に触れた者)のみが持つことを許される詩情なのかもしれません。永遠に近づくことができないふたつのたましいが、それ故に、一閃の音色を散らす……この世に落とされた奇跡のひとしずくでした。

 二台のピアノによるラモーは(最も好きな「ガヴォットと6つのドゥーブル」なだけに尚、)衝撃でした。二台で同時に演奏するのではなく、最初にタローさんがクラシックのスタイルで弾いた後、同じ曲を今度はトロティニョンさんが編曲して返します。

 タローさんの紡ぐ孤高のラモー……なんてなんて心を震わす音色なのでしょう! 2007年に初めてリサイタルで拝聴、その禁欲的でモダーンな音色にいっぺんで魅せられました。それはまさに祈り。これほど純真なる祈りの言葉がこの世にあるでしょうか……溜息ばかりがこぼれました。


 演奏以外で印象的だったのは、ソロ演奏時、演奏のないもうひとりのピアニストが舞台から下がるのではなく、舞台上手後方でお相手の演奏を温かく見守っていたこと。風景として、とても素敵でした♪


 そしてそして、アンコールにて、「別の意味で」奇跡の瞬間が訪れました……なんと、バッハのカンタータを「連弾」されたのです……! 美しき青年二人が横顔を並ばせ、時に頬を寄せながら(半分妄想)、旋律を紡いでいきます。その美しさはまさに、禁じられた美。永遠に近づくことが許されないふたつのたましいが、一刹那すれ違い、また別れてゆく……その横顔のなんという哀感。

 スカルラッティ(Sonata K141 in D minor Allegro)の競演もラモーの形式で、タローさんの繊細優美な音色が闇へと消え、トロティニョンさんへ。トロティニョンさんのご演奏はおそらく即興。


 見目も麗しい、最大級にたましいが揺さぶられた一夜でした。

 ・

 終演後、激しい雨ゆえ少し館内で待ってみようと、サイン会中の美しきタローさんのお顔を三人で拝んでいたところ・・・なんと、目映いばかりのサインをゲットした畑さんに偶然お会いしました! そして、我らも便乗とばかりに速攻CDを購入(タローさんのソロCDは全部持っていたため、一番好きな《私的な日記》を再度購入)、わくわくどきどきで列に並びました。

 順番になり、相まみえたところ・・・神々しいとしかいいようのない完璧なる美しさに眩暈を覚えつつひれ伏して祈りを捧げそうになりました。。。神が作りしたもう被造物とは、かようなものである! と。


AT.jpg
タローさんのサイン♪ 


 その後、夢から覚めやらぬ心地のまま、四人でラデュレに移動。台風襲来が近づいているせいでお店の半分は既に灯りを落とし無人でしたが、嵐の心配より今宵の夢心地優先の人間四名、その到来を温かく(と思いたい)迎えて下さり、美味しい紅茶とデザートで今宵の祝杯をあげました。

 美意識を同じくする方々と、掛け替えのない時間を共有できることは何にも増して格別です。今宵の音色を思い出すたび、ラデュレでの燦めきの時間(……トム・クルーズの映画は全部見ている事件含む……汗)も等しく思い出されます。美しい記憶がまたひとつ仕舞われました♪ ぜひまた語らいのお時間をご一緒させてくださいませ。


 *

 2007年に拝聴したタローさんのソロ・リサイタルも嵐の夜でした。→感想

 嵐の夜、タローさんの音色が満ちる場所だけに、静寂が存在している……
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