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プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
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DATE: 2013/01/09(水)   CATEGORY: 随想録
ブベニチェク〜パ・ド・トロワのため息
ツイッターでas dollさまがつぶやいていたのを拝見し、これは行かねば!と徹夜明けに都内をめぐるハードスケジュールの後でしたがルカ氏とともにBunkamuraへ。


ブベニチェク・ニューイヤーガラ《カノン》
2013年1月7日(月)19:00
Bunkamuraオーチャードホール


以下、言いたい放題のメモ。


★《トッカータ》イローナに捧げる
ニューヨーク・シティ・バレエのために振付した作品。まさにこのバレエ団にふさわしい抽象バレエ……と一言では済ませられないパがそこに。クラシック・バレエから大きく逸脱しない誠実なる振付、しかし、そのパのひとつひとつは現代という時を求めて、ほんの少し、歩みを進めていた……この、ほんの僅かな一歩に、どれほどの壮絶が存在するだろう……その小さき亀裂を思い、胸を打たれた。
バレエは基本、人間主体の振付だし、この作品も空間に人間が切り込んでゆく方向性には違いないけれども、時に植物が風に揺れているような振付とも相まって、空間の質、そこに漂う空気の質感が感じられる刹那が多々あった。空気が主役というか…。それ故に、お衣装がちょっと不満足。無名性の高い衣服は素っ気ない方向性に傾いていた。ほんの少し空気を含んだお衣装だったらもっと感動が大きかったと思う。また、音楽に関しては、全編フィリップ・グラスorウィム・メルテン風で踏襲した方がもっと世界観が鋭利になったと思う。

それにしても、これ程、パ・ド・トロワを多用し、魅惑的に描いてみせる振付家は希有ではないだろうか。


★《ドリアン・グレイの肖像》オットー・ベルティスに捧げる
英国文学好きにはたまらないセレクション。しかし、結論としては、ちょっと構成が散漫でした。

双子の兄弟ゆえに実現できた作品、オットー氏がドリアン・グレイを演じ、イリ氏が画家バジル、ドリアンを悪に導くヘンリー・ウォットン卿、そして絵画の中のドリアンを演じわける大変興味深い設定。双子によるドリアンのパ・ド・ドゥはドリアンの変貌と本質を描ききっていて見事でしたが、それ以上に、シヴィル・ヴェインが介入してくるパ・ド・トロワが素晴らしかった! 

この、パ・ド・トロワへのこだわりは何だろう…! 双子というパ・ド・ドゥの狭間には、常に二人を写し出す鏡の存在=第三の舞踊手の存在が必要なのかもしれない……同調し、少しずれ、大きくずれ、ついには途方もない遠さの果ての一心同体……その円環する存在性をつぶさに記録する鏡が…。そんな宿命に彩られた文学性が垣間みられる振付は素晴らしかったけれども、ここでも音楽がいまひとつ。ちょっとメロドラマすぎ。確信犯的にメロドラマにしているわけではないのでこれではちょっと陳腐に見えてしまう。
全体の構成がすっきりとしていないせいで、見所が散逸している印象。プティの《若者と死》のようにタイトな仕上がりにするか、アシュトンの《田園の出来事》のように一幕物としてしっかり仕立てるか、どちらかに振った方が良いような…。完璧な仕上がりではありませんでした。
文学作品をバレエ化するという点では、アシュトン、マクミラン、ジョン・クランコ、ノイマイヤーの完成度には至っていないと思いました。

香水でいえばムスクたっぷりの舞台、ベジャールに代表される濃厚な野性味あるゲイテイストは嫌いではないけれども、やっぱりドリアン・グレイには英国香水のごときノーブル&清廉テイストを望みます。


現代に設定を移したマシュー・ボーンの《DORIAN GRAY》
確信犯的に全てを取りはからう手腕をまた堪能したい…。
→Matthew Bourne's DORIAN GRAY (Official promo montage)
プリズン・ブレイク(ウェントワース・ミラー)なドリアンですね……


★牧神
バレエ・リュス、ニジンスキーの代表作《牧神の午後》を大胆に翻案した作品。
こ、これは・・・とてつもなく衝撃的な作品です! これを鑑賞できただけでも今回のガラ公演に行った価値あり。「一度の鑑賞じゃ足りない…。」(ルカ氏談)

聖職者と少年との同性愛を描いた作品、加えて振付じたいもその勇気を賞賛せねばならぬ程に直接的。しかし、真に衝撃的なのは、一般的にはタブーとされるモチーフを扱ったそれらの点ではなく、神をも恐れぬ人間のその行為が、神々しいまでの美を孕んでしまっているという点……おお、神よ、祈らずにはいられません……。
セクシャルな題材なので一見「性的欲求」に焦点を当てているように思えますが、性的欲求などという人間界の瑣末な次元を突き抜けた、人知の及ばぬ美の世界の出来事を扱った作品だと思う。その、未知なる抽象を表現するために、この題材が必要だったのだと思う。
こ、これは、見ても良い世界なのだろうか……そんな不安が去来する程の極限の美でした。

構成、音楽、振付、舞台装置、衣装、全てが完璧に調和した作品でした。音楽はプーランク作曲の少年合唱曲で始まりドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》へ。美をめぐる戦慄にこれほど相応なる倦怠の旋律が存在するだろうか…! 安藤忠雄の光の教会のように、四つのパネルで隙間を作ることで光による十字架を現出させ、そのパネルの移動で細い十字架がしだいに太くなっていく演出も神の視線の象徴のようで本当に素晴らしかった。
聖職者が赤/紫の衣服を着用しているのは、ゴルゴタの丘の十字架の道行きの直前、兵士たちから侮辱を受けた際に着せられた服の色に由来しており(福音書によって記述は異なり、マタイでは赤、マルコ・ヨハネでは紫。赤=殉教、紫=改悛の色)、その出来事と常に共に在り続ける表明とも言えるので、聖職者役の舞踊手が最初着用していた赤い外套を途中で脱ぐのも興味深い演出。彼は果たして、何を脱ぎ捨てたのだろうか……。
また冒頭、主教座を思わせる椅子に聖職者が座っていたのがラストでは牧神がその椅子に座って幕となる。教会にとって主教座は権威と教えの象徴、そこが牧神に乗っ取られている点も面白かった。

キャスティングによって完成度が大きく変化する作品だと思う。今回の公演で何が素晴らしいって、聖職者役のラファエル・クム=マルケ氏! マチュー君がヴァンサン・カッセルになってさらに凄みを増したような……とにかく、罪深い程に美しかった! 黒衣の衣装も胸元と腰部分がシースルーになっていたり♪ 牧神の配役も良かったけれど、少年役のダンサーが葉桜以後だったのが少し残念。できれば金髪碧眼のいかにもな少年希望。
聖職者、少年たちのうちに潜む牧神をかいま見せるように、ニジンスキーの振付が時折覗くのも素敵。ニンフの静的なコール・ドもそのまま踏襲されていて、翻案作品としても最高傑作だと思う。

そしてここでもパ・ド・トロワである。聖職者、少年、牧神の神々しいまでに罪深いパ・ド・トロワは人間側の偽善的な言い分を全て拒絶する程の美のパワーを保持していた…。。。圧巻。

とにもかくにも、バッド・エデュケーション(by ペドロ・アルモドバル)な素晴らしい作品でした!


★《プレリュードとフーガ》
アシュトン風の正統で美しき作品。ドロテ・ジルベールさんの清楚をあますところなく伝える振付。バレエ基本の公演であれば、トウシューズをきちんと身につけた作品を一作は拝見したいので大満足。それにしても、作風の幅が広い。


★《ル・スフル・ドゥ・レスプリ〜魂のため息〜》オルガとマリーに捧げる
美しき題名がそのまま舞台に降りた作品。
普遍性を備えたもはや古典とも呼べる傑作でした! 個人的な好みは《牧神》だけれども、ブベニチェク兄弟の真骨頂はこの作品にこそあるのだと思う。クラシック・バレエをコンテンポラリーへと繋ぐ手腕は天才の領域。自然物をみているような清々しさが本当に気持ちよい。
ここでも多用される男性のパ・ド・トロワとコール・ドがとくに素晴らしい。
手放しで賞賛したい作品です。

ひとつ個人的に大変気になったのが、お客様方の拍手のタイミングがとっても早いということ……拍手は無常にも私たちを束の間の夢から現実へと引き戻す(劇中の賞賛の拍手は別)。もっともっと、たとえ数秒であっても、夢の余韻を楽しみたい…。幕が降りる前に拍手をするのはやめよう。

《牧神》のような衝撃作、《プレリュードとフーガ》のような正統派作品、そして普遍性を備えた本作……恐るべしブベニチェク兄弟!


(ご本人の持ち味が)濃厚なゲイテイストという点では、パトリック・ド・バナ氏も同じ系譜にいるけれども、ド・バナ氏の方が洗練の方向性、ブベニチェク兄弟はあくまでも野性やヴァナキュラーに忠実。コンテンポラリー作品の振付に焦点を当てると、当代の一番の衝撃は今のところラッセル・マリファント氏。二人組という点では、ロイヤル・バレエ団出身、バレエ界のPet Shop BoysことBallet Boyzの方が断然好みです。


★The Ballet Boyz《Torsion》
振付:Russell Maliphant/音楽:Richard English




こちらの音楽はバリー・アダムソンです!
★Sylvie Guillem and The Ballet Boyz《Broken Fall》
振付:Russell Maliphant/音楽:Barry Adamson






★Sylvie Guillem and Russell Maliphant《PUSH》/振付:Russell Maliphant




シルヴィ・ギエム女史とバレエ・ボーイズの公演は2004年に拝見。これ以上研ぎすまされた世界は存在しない…と思える程、美しく精緻な舞台でした。2007年に拝見したギエム女史とマリファント氏の《PUSH》は一舞台を遥かに超えた歴史的事件でした。
静寂の詩人と呼びたいラッセル・マリファント氏。深い精神性を持って静寂の中に奇跡のひとしずくを落とす世界をまた堪能したいです。(思い返せば益々、《エオンナガタ》が謎。同じ人物の作品とは到底思えない程に…。)



年末のHURTSに続き、またもや素晴らしき美に打たれたひとときでございました♪

教えて下さったas dollさまに心より感謝申し上げます!





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