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プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
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DATE: 2013/02/16(土)   CATEGORY: SCRIPTORIUM
《スクリプトリウム》
 HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム》も早いもので最終日を残すのみとなりました。

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HOLON タイポグラフィ作品展《スクリプトリウム》
〜聖書の言葉を写し、纏う試み〜


2013.2.11[月・祝]〜16 [土]
13:00〜20:00
森岡書店(日本橋茅場町)



 約二十年前からこつこつと制作してきたオリジナルのアルファベット書体を初めてお披露目する展示です。

Typefaces.jpg《書体の廻廊》修道院の廻廊に見立てたデザイン枠に書体が並んでいます


 約二十年前に初めて制作した書体《パピルス》と、今年に入って制作した書体《薔薇窓》が仲良く並んでいる風景は感慨深いものがあります…

 制作し始めた当時、「可読性の低い(=読めない/読みにくい)書体は文字とは言えない」とまったく共感を得られず、それでも「言葉の意味を伝達することだけが書体(文字)の役割ではないはず。言葉には、ニュアンスや色彩、語られる人の声色による印象、歌われる言葉の艶やかさ……等々、曰く言いがたい多彩な情景があり、それらを記述するための書体があってもいいはず……」と、可読性よりも装飾を重視した書体を制作し続けてきました。

 そんな不遇の時代、この書体に強く共感し応援し続けてくれた方が二人居ました。

 ひとりは当時通っていた美術大学に「映像工学」を教えに来て下さっていた慶應義塾大学の福田忠彦先生。そのご縁で、人間工学がご専門の先生の元、オリジナル書体の研究を論文にまとめ、二つの国際会議で発表することができました。また、慶應義塾大学(藤沢キャンパス)での先生の授業の枠に私の発表を組み込んで下さり、年に一度、学生さん達にむけて発表する機会を設けて下さったりと、言葉では尽くせぬ程のご恩があります。先日、福田先生がご多忙の中ご来廊下さり、長年の成果をご高覧頂けたことは本当に嬉しく、感慨深く、神様にただただ感謝するばかりでした。

 もうひとりは、共にHOLONとしてブックデザイン業を営んできた腹心の友・ルカさん。1997年のHOLON設立以来、オリジナル書体制作は二人のライフワークとなり、この度の展覧会を迎えることができました。


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左:リトグラフ作品《Ash Wednesday》
「創世記(文語訳)」の一節が書体[セメタリー・ゲイツ]で組まれています
右:リトグラフ作品《喪の都邑(みやこ)》
「エレミヤの哀歌(欽定訳聖書)」の一節が書体[短夜][サフラン・クロッカス]で組まれています



 取り上げた聖書の一節に最もふさわしい書体はどれか……という試行錯誤から制作は始まります。これまで制作した書体の中に最適な書体がない場合は新しい書体を制作しました。


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 《Ash Wednesday》は聖灰水曜日に捧げた作品。創世記の一節「汝は塵なれば塵に皈るべきなり」が綴られています(日本語を綴る場合はローマ字組みしています)。灰の水曜日は大斎節の始まりの日、生と死に想いを寄せる日です。灰の水曜日の礼拝では、一年間大切にしてきた棕櫚の十字架を燃やし、その灰で額に十字架の印を受けます。その際、司祭が唱えるのが先の一節にちなんだ文言「あなたは塵から生まれたのだから、塵に帰らねばならぬことを覚えなさい」。
 書体「セメタリー・ゲイツ(制作年:2012年)」は欧羅巴の墓地の鉄細工の門をイメージして制作、墓地の門はまさに生と死の狭間に位置する存在、創世記の一節を綴るにふさわしい書体として選びました。


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 《喪の都邑(みやこ)》は、欽定訳聖書(KJV・1611)の「エレミヤの哀歌」の一節「For these things I weepe, mine eye, mine eye runneth downe with water,」(文語訳:これがために我なげく わが目やわが目には水ながる)が綴られています。聖都エルサレムを喪ってしまった悔悛と深い悲しみで頬を涙がつたう嘆きの場面。

 書体「短夜(制作年:2004年)」は、夜が早く明け、物の隙間から朝の光が差し込む様子を象った書体。短夜のように、喪の夜が早く明けますようにとの願いを込めて。胸元にブローチのように冒頭の単語「For」が綴られています。
 書体「サフラン・クロッカス(制作年:1993年)」はサフランの花びらと長い雌しべを象った書体。旧約聖書「イザヤ書」の、聖都エルサレムの栄光の回復が約束されている箇所「荒野とうるほひなき地とはたのしみ 砂漠はよろこびて番紅(さふらん)の花のごとくに咲き輝やかん」にちなみ、サフランに喪が明ける願いを託して。


 ……と、全作品、このような過程を経て制作されています。


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シルクスクリーン作品《沈黙の聖女》
「詩編」の一節「わがたましひは默してたゞ神をまつ」が書体[短夜][向日葵]で綴られています



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《小袖雛形聖書》シリーズ4点のうちの1点
「伝道の書(コヘレトの言葉)」の一節「裂くに時あり」が書体[天球儀]で組まれています



 以上は聖書の言葉を写し、衣服として纏うことを試みた平面作品の一部。

 ・

 コラージュの手法を応用した写真作品も展示中です。

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上:《すみれとすみれのあいだ》デジタル写真/銀塩プリント
下:《夢のゆきかう薄明》デジタル写真/銀塩プリント


 リトグラフ作品《Ash Wednesday》の手袋の切り抜きを立体コラージュの感覚で配置、写真で一発取りをしています(パソコン合成はしていません)。エリオットの詩《Ash Wednesday》のイメージを重ね、そのポエジーを表現すべく制作しました。タイトルはエリオットの詩からの引用です。



 平面作品は一節を綴っていますが、限定版書物では、欽定訳聖書の「The Song of Solomon(雅歌)」と「The Lamentations of Ieremiah(エレミヤの哀歌)」それぞれの全文をオリジナル書体で綴りました。中世の修道士たちが一文字一文字手書きで聖書の言葉を写したように、現代に生きる私どもは現代的な手法たるデジタルフォントで聖書を写しました。


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タッセルの栞付き書見台の上の限定版書物《QUIRE》シリーズ


 「QUIRE」とは折帖のこと。折帖がいくつか製本されてコデックス(冊子・書物)となります。その昔、修道士たちはQUIREごとに写字に勤しんだそう。今回展示するのは二つの「QUIRE」。一生かけて聖書の「QUIRE」を制作し続け、いつかコデックスとして完成させたいです♪


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《QUIRE〜The Song of Solomon》限定20部
クワィア1帖(糸縢り手製本)、リトグラフ1点、原文、書体見本
シルクリボン綴じ・特装函入り
ファブリアーノ・ロサスピーナ紙、ハーネミューレ紙、雁皮紙使用



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《QUIRE〜The Lamentations of Ieremiah》限定20部
クワィア1帖(糸縢り手製本)、リトグラフ1点、原文、書体見本
シルクリボン綴じ・特装函入り
ファブリアーノ・ロサスピーナ紙、ハーネミューレ紙、雁皮紙使用



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版画作品の刻印とサイン



 版画、写真、書物作品(全て新作20点)の他、プライベート出版物や長く装丁を担当してきた『現代思想』(青土社刊)なども展示中です。


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邦楽家・西松布咏氏のための舞台衣装(2004年)
書体[短夜]にて江戸時代の小唄「一声は」の詞章が組まれています
コンサート当日、「一声は」の詞章を纏いつつ「一声は」をご演奏されました




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 本日16日最終日、菫色に色づく写字室にて、皆様のご来廊を厳かにお待ちしております!


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