Club Noohl
プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
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やさしくきよらかな、一枚のうすき墓標《2》
Shimi_3.jpg


第2章.....フェティシズム、同性愛、刺繍刑

 モノの持つ物語を愛するフェティシズムもまた、墓標という別名を持つ。
 ヴィクトリア朝時代のティ・ガウン、レースの手袋、ベルギーのビーズ・バッグ、中国刺繍の端切れ、ティアドロップ型の香水瓶・・・女性の手から手へと、丁寧に時を紡いできたモノの優雅を、執拗に愛することでふっとあらわれる追憶の一枚は、早熟さと甘さを閉じこめたウィスキー・ボンボンのように、思春期の複雑を、この掌に届けてくる。
 思春期のころ・・・そこにはまず、同性愛、と名付けることを知らなかった幸福と不幸があった。繊細な友情の行く先を知らず、憂鬱と清冽とのあわいで、慎ましくも揃いのリボンを編むことでしか、一日を無事終えることはできなかった。放課後の教室には時折二つの人影があり、それが重なって一つになることの危うさを、知るよしもないほど素朴であった。
 もう二度と手に入らないたぐいのあえかな友情、純真の奥にくぐもる小暗き残酷・・・それらを墓碑銘として刻むことを、追憶の館に眠る何かが誘ってきた・・・(あるいは、あのころの日々を、美しく仕立て直すために?)



 墓碑銘を記した一枚一枚を、甘く、かぼそいリボンで閉じ、番のいない、街角の画廊にひっそりと陳列する・・・そんな情趣を封印したちいさき書物をつくりたい、という想いから、リーフ・ブック《刺繍刑》を創作した。
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