Club Noohl
プライベート・プレス──書物と紙片にまつわるエトセトラ
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やさしくきよらかな、一枚のうすき墓標《3》
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第3章.....蔵書票、友情の悲哀、死の意味

 端々の傷んだ古書に、思いがけず蔵書票が貼られていることがある。
 書物は、ひらかれることで物語を紡ぎはじめるが、とじられることでもまた、頁の間に「持ち主」という物語をしまい込む。古書をひらいた時の、記された物語とは別の陰影を古い匂いとともに嗅ぐのは、前の持ち主とともに過ごしてきた時間、つまりは書物の過去という、もうひとつの物語が織り込められているからである。
 蔵書票を貼る行為は、書物と持ち主との友情の証であるにもかかわらず、どこかしら悲哀の情を湛えている。それは、いつの日か、この書物が捨てられ、あるいは人手にわたりゆくのとともに、この友情が育んだ過去というものも、無惨に葬られ、あるいは見知らぬ人へと手わたされる宿命を、あらかじめ負っているからである・・・



 蔵書票が貼られた古書からわたしは、かぐわしき死の匂いを嗅ぐ。死という永遠の持つ意味を、死という静謐の持つやさしさときよらかさを、見知らぬ友情の印からそっと受け取る。人間の一方的な破壊は死を意味しないことを、死とは、存在が去った後の情緒を留め、それを人へと伝えてゆく意志を持っているものなのだということを、そのちいさき墓碑銘は、そっとささやいてくる。
 どうか、死にあたいする美が、一枚のうすき墓標となって、やさしさときよらかさを伝えてゆけますよう・・・
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